旅先のアクシデントを成長機会に:ジャーナリングでトラブル対応力を磨き、仕事に活かす方法
ビジネスパーソンにとって、旅は非日常のリフレッシュであると同時に、新しいインプットや視点を得る貴重な機会でもあります。しかし、どれだけ周到に計画しても、旅には予期せぬ出来事やトラブルがつきものです。交通機関の遅延、予約の変更、体調不良、忘れ物など、計画通りに進まない状況は少なくありません。
こうしたアクシデントは、単なるストレス源として片付けられがちですが、視点を変えれば自身の対応力や問題解決能力を試す、あるいは鍛える絶好の機会となり得ます。そして、この経験を単なる記憶に留めず、仕事におけるリスク管理やトラブル対応に活かすための有効な手段が、ジャーナリングです。
旅の予期せぬ出来事をジャーナリングすべき理由
旅先でのアクシデントをジャーナリングすることは、単に出来事を記録する以上の意味を持ちます。そこには、ビジネスシーンで遭遇するであろう不確実な状況への対応力を高めるための多くの示唆が隠されています。
- 感情と状況の客観的な整理: トラブル発生時は感情的になりやすいものです。ジャーナリングによって、その時の感情、起きた事実、そして自身の行動を書き出すことで、状況を客観的に見つめ直すことができます。
- 問題解決プロセスの可視化: 問題にどう気づき、どのような情報を収集し、どのような選択肢を検討し、最終的にどう解決に至ったのか、その思考プロセスと行動の軌跡を記録することで、自身の問題解決パターンや改善点が見えてきます。
- 学びの抽象化と応用: 特定の旅のアクシデントから得た教訓(例: 事前準備の重要性、代替案の検討、情報収集の方法、関係者とのコミュニケーションなど)を抽象化し、仕事におけるリスク管理や予期せぬ課題への対応に応用可能な「ポータブルなスキル」として抽出できます。
旅先のアクシデントからビジネススキルを引き出すジャーナリングテクニック
多忙なビジネスパーソンでも、旅の隙間時間や移動中に実践できるジャーナリングテクニックをいくつかご紹介します。
1. 「事象→感情→思考→行動→結果→学び」フレームワーク
トラブルが発生したら、その一連の流れを以下の要素に分解して記録します。全てを網羅できなくても、思いついた部分だけでも構いません。
- 事象 (Event): 何が起きたか、具体的な事実のみを客観的に記述します。(例: 〇〇行きの電車が30分遅延した)
- 感情 (Feeling): その時どう感じたか。(例: イライラした、不安になった、焦った)
- 思考 (Thinking): なぜそう感じたか、頭の中で何を考えたか。(例: 後の予定に間に合わないかもしれない、連絡しないといけない)
- 行動 (Action): 実際にとった行動。(例: 駅員に状況を確認した、代替ルートを調べた、関係者に遅延の連絡をした)
- 結果 (Result): その行動によって状況がどうなったか。(例: 代替ルートで無事間に合った、連絡を受けた相手が対応を調整してくれた)
- 学び (Learning): この経験から何を学んだか、次に活かせる教訓は何か。(例: 移動時間のバッファを持つ重要性、情報収集のスピード、関係者への早期連絡の有効性)
このフレームワークを用いることで、感情に流されず、冷静に状況分析を行い、具体的な行動とその結果、そして普遍的な学びを抽出する訓練になります。これは、ビジネスにおける事後分析や問題解決プロセスと共通する思考法です。
2. 「もし〇〇だったら?」思考実験ジャーナリング
実際に取った行動とは異なる選択肢や、状況が異なった場合の対応について思考を巡らせ、ジャーナルに書き出す方法です。
- 「もしこの時、別の代替手段をすぐに調べていたら、結果はどう変わったか?」
- 「もし事前の情報収集をもっと徹底していたら、この問題は回避できたか?」
- 「もし相手に別の言葉で伝えていたら、反応はどう違ったか?」
この思考実験は、多様な可能性を考慮する力を養い、次回の類似状況や、ビジネスにおける意思決定において、より多角的な視点を持つ助けとなります。リスクヘッジやコンティンジェンシープラン(不測の事態への対応計画)策定の思考トレーニングとしても有効です。
3. 原因分析&解決策ブレインストーミング
問題の根本原因を探り、可能な解決策を網羅的に考えるジャーナリングです。
- 「なぜこの問題は起きたのか?(根本原因は何か)」 - 5Whys(なぜ?を5回繰り返す)のようなフレームワークを頭の中で行い、書き出してみます。
- 「この問題を解決するために、どのような選択肢があり得るか?(可能な解決策を全てリストアップ)」 - 実現可能性は一旦無視して、思いつく限りのアイデアを書き出します。
ビジネスにおいて、目の前の問題だけでなく根本原因に対処すること、そして固定観念に囚われずに多様な解決策を検討することは極めて重要です。旅のトラブルを題材に、この思考プロセスを磨くことができます。
ツールを活用した効率的なジャーナリング
忙しいビジネスパーソンにとって、ツールの活用はジャーナリングを継続し、学びを仕事に繋げる鍵となります。
- ノートアプリ(Evernote, OneNote, Notion, Obsidianなど):
- スマートフォンやPCからいつでもどこでも記録できます。
- 写真(遅延証明書、状況証拠など)や音声メモ(その場の状況や感情を素早く記録)を添付できます。
- 記録した内容をタグ付けしたり、キーワードで検索したりすることで、後から特定のトラブル対応事例やそこから得た学びを素早く参照できます。
- 構造化されたノート(テンプレート機能など)を利用すれば、「事象→学び」フレームワークなどに沿った記録を効率的に行えます。
- 音声入力機能:
- 移動中や手が離せない状況でも、スマートフォンの音声入力機能を使えば、その場の状況や思考、感情を素早く記録できます。後でテキストに変換して整理すれば良いでしょう。
- タスク管理ツールとの連携:
- ジャーナリングで見出した「学び」(例: 「次回〇〇をする際は△△の情報を事前に確認する」「トラブル発生時はまず××に連絡を入れる」)を、自身のタスクリストやリマインダーとして設定しておくことで、実際の行動に結びつけやすくなります。
これらのツールを組み合わせることで、旅先で発生した予期せぬ出来事に関するジャーナリングを効率的に行い、記録した情報を「第二の脳」として蓄積・活用することが可能になります。
旅のアクシデントから得た学びをビジネスに応用する
旅のジャーナリングで抽出した学びは、そのまま仕事における実践的なスキルとして応用できます。
- リスク管理: 事前準備の重要性、代替案の検討、情報収集の徹底といった学びは、プロジェクトのリスク洗い出しや対策立案に直接活かせます。
- 問題解決能力: 「事象→学び」フレームワークによる分析思考、多様な解決策を考えるブレインストーミング、根本原因の追究といったジャーナリングプロセスは、ビジネス課題の解決にそのまま適用できます。
- 対応力と意思決定: 予期せぬ状況下での冷静な感情処理、限られた情報での判断、複数の選択肢からの意思決定の経験は、ビジネスにおける不確実性の高い状況での対応力や意思決定の質の向上に繋がります。
- コミュニケーション能力: 旅先での関係者との交渉や情報伝達の経験から得た学びは、社内外の関係者とのコミュニケーション円滑化に応用できます。
これらのスキルは、ビジネスパーソンにとって不可欠なものです。旅先でのアクシデントは、教科書では学べない生きた教材となり、ジャーナリングはその学びを最大限に引き出すツールとなります。
まとめ
旅における予期せぬ出来事やトラブルは、時に困難を伴いますが、ジャーナリングを積極的に活用することで、これらを自身の成長、特にビジネススキルの向上に繋がる貴重な機会に変えることができます。
旅の最中はもちろん、旅の後で振り返る時間にも、今回ご紹介したジャーナリングテクニックやツールを活用し、感情の整理、状況の分析、学びの抽出を行ってみてください。旅で磨かれたトラブル対応力や問題解決能力は、きっとあなたのビジネスをより強固なものにするはずです。旅を単なる休息ではなく、学びと成長の場として捉え直し、ジャーナリングと共に「困った」を「力」に変えていきましょう。